臨床医インタビュー・私の診療指針(2015年5月3日取材)
監修:おおかわ整形外科クリニック 大川 得太郎 先生
ご施設の特徴や力を入れている診療内容について教えてください。
私は、骨粗鬆症と関節リウマチによる痛みに苦しむ祖母を見て整形外科医になろうと決心し、大阪市立弘済院附属病院などで骨粗鬆症治療について学んだ後、2005年に故郷の藤井寺市で当クリニックを開業しました。藤井寺市は大阪府の中でも特に高齢化の進んだ地域ですが、骨粗鬆症を専門とする医療機関はほとんどありませんでした。
当クリニックは、①全身用骨密度測定装置DXA (Dual-energy X-ray Absorption;Hologic Delphi)を使った骨粗鬆症診療、②漢方治療、③変形性膝関節症や外反母趾などの足の疾患に効果的な整形靴を使用した治療、④エコーを使用した効果が目に見える治療、の4つを柱としています。
ほとんどのスタッフは開業当初から変わっておらず、スタッフ一丸となって、日々診療に取り組んでいます。
1日の受診者数は約150名で、多くが骨粗鬆症の患者さんやその家族です。骨粗鬆症に対して確実な診断と重症度に応じた治療を行うように努力しており、藤井寺市では唯一、全身用DXAを導入しています。全身用DXAで測定した骨密度を示せば、患者さんも治療効果を実感でき、治療に対するモチベーション向上が期待できます。
また、2年前にはエコーを導入しました。エコーを当てれば、筋断裂、靭帯損傷、腱鞘炎、関節炎などの患部の状態をリアルタイムで見ることができます。目で見ることができると、患者さんも納得して治療を受けてくれます。
そのほか、オーソぺディックシューフィッターという整形外科の知識を持ったマスターシューフィッターの在籍する靴店と提携した整形靴を用いた治療や、西洋医学と漢方を組み合わせた治療を行っていることが、当クリニックの特徴といえます。
日常診療で心がけていることについて教えてください。
患者さんに対しては、できるだけ専門用語を使わず、わかりやすく説明するように心がけています。カルテには病気のことだけでなく、趣味やお孫さんの話なども書き留め、次回来院時の話題に挙げるなど、患者さんとの対話の機会を増やすように心がけています。私は、会話が弾まなければ、疼痛の原因を聞き出すことは難しいと考えています。当クリニックには高齢の患者さんが多いのですが、高齢になればなるほど、治療に対して諦めずに前向きに取り組む気持ちを維持することが難しくなります。そのため、「もう歳だから…」と諦めがちな患者さんには、「90歳以上が高齢者です。あなたはまだ若葉マークですよ」と諭します。
薬物治療では、漢方を積極的に取り入れています。“冷え”や血流が悪く滞りがちな“瘀血”などが原因で疼痛が起こることもありますが、西洋薬に漢方薬を併用することで、これらの症状を改善できます。COX-2選択的阻害剤セレコックスは、膝の痛みを訴える患者さんによく処方しています。最初は漢方薬と併用し、少し痛みが治まってきたら漢方薬単独による治療や、運動指導および生活指導を積極的に実施していきます。
運動指導、生活指導の際には、パンフレットなどを見せて、痛みの原因や日常生活での注意点などを理解していただくよう努めています。ご自宅で取り組むことを宿題にし、次回来院された際にご自分の頑張り具合を100点満点で評価していただいています。
今後取り組んでいきたいことについて教えてください。
今後は、骨粗鬆症に対する認知や理解が深まるように、市民公開講座や学会発表を通して、南大阪地域の骨粗鬆症治療のさらなる充実に寄与したいと考えています。今後は地域連携にも力を入れたいと考えており、当クリニックでDXAを撮影していただき、その後は地域のクリニックで治療していただくような関係を築きたいと考えています。
実は、私は1987年に大阪市立大学の整形外科に入局しており、ノーベル生理学・医学賞を受賞された山中伸弥先生とは同期です。彼が頑張っている姿を見ると、「自分も負けないぞ」という気持ちになります。これからも現状に満足することなく、常にアンテナを張って新しい情報を取り入れ、進歩していきたいと考えています。